彼女に言っていない「好きだ」の三文字
皆さんこんにちは大学生バーテンダーです。
依然として新型コロナウイルスが猛威を振るっており、緊急事態宣言解除が延長される見通しです。
勿論僕のアルバイト先のバーも休業となっており、いつ再営業するかわかりません。
さてさて今日は僕の受験期に経験した甘酸っぱい恋愛について語ろうと思う。
僕の受験は一言でいうと青春がギュッと詰まっていた。
朝から晩ま学校で勉強した。朝の6時半には学校に行っていた。
8月の暑い朝は窓を開け、朝日を浴びながら生ぬるい風と共に勉強し、12月の寒い日にはお尻の下にカイロを置いて温まりながら勉強していた。
友達同士で志望校に向かって勉強した日々はきっと人生の糧になったし何よりもいい思い出だ。弱みを吐いたら支えてくれる友達にも先生にも僕は感謝している。
受験を経験した人ならわかってくれるだろうが、高校3年間、そして受験期1年間は一人では乗り切ることが出来ない。誰も心の支えがないと途中でくじけてしまう。
それだけプレッシャーがかかる。
高校受験の倍率は4倍だった。地方の高校となると1.3倍とかもあり得るだろう。高校受験は落ちる方が難しいのだ。
一方大学受験。私大最難関の早稲田は約13倍。全国の天才たちがめちゃくちゃ頑張って勉強してきても合格するのは13人に1人。僕のすべり止めの私大も12倍だった。
国公立大学はまた特殊だ。センター試験を受験して、自己採点をする。ここで点数が低かったら出願すら出来ない。仮に出願したとしても二次試験では同じように頭のいい人同士が合格をつかみ取るために回答用紙に答えを記入する。倍率は大体3~5倍。
この様に大学受験は合格する方が難しいのだ。
そんな僕も数年前は泣きながら勉強していた。
しかしそんな僕には苦しい受験勉強を乗り越えられる気力を与えてくれる人がいた。
「好きな人」だった。別に彼女ではない。単純な片思いだった。
僕の高校では1年生のクラスは外部生と内部生で分けられていた。僕は外部生、彼女は内部生。教室も違ったし棟が違ったので接点がなかった。
僕と彼女との出会いは高校2年生の頃だ。
2年生になると文理選択によってクラスが分けられる。そこで僕と彼女共に文系を選択した。理由は単純で英語が好きだからだ。
しかしクラスは違った。
ある日僕が教室移動の為に階段を上っているとそこに彼女がいた。
女の子数人と話をしてる彼女の笑顔に僕は虜となった。
その次の授業のことなんて頭になかった。彼女の名前が知りたかった。
そこからの僕の行動は早かった。内部生の男子に名前を教えてもらい、どんな人なのかを徹底的に聞き出した。部活、元カレの有無、好きなタイプ、全てだ。
ただ決定的に違うところがあった。成績だ。彼女は学年トップの成績だった。一方僕は下の下。振り向いてもらえるはずがなかった。当時の僕はそれだけであきらめてしまった。僕にダイエットの神様ならぬ、勉強と恋愛の受験はまだ降りてこなかった。
そうしてやってきた3年生。朝9時にクラス発表が行われた。
目玉が飛び出た。ななななななんと彼女とクラスが一緒だったのだ。
めちゃくちゃ嬉しかった。一回も話したことが無かったけど、僕の心の中は何を話そうかでいっぱいだった。
気分上々で授業を受ける日々。気分上々でする部活。
明日学校に行けば彼女に会える。そんなきもい考えを持っていた。
3年生の6月。部活が終わった。高校総体までやり切った部活が懐かしく思えると同時に大学受験までのカウントダウンが始まった。とは言えあまり勉強しなかった。受験に対しての情熱が無かった。大学の志望動機なんてない。自分の偏差値に近いからその大学に行くんだ。そんな感じだった。
僕は東京にある大学を目指していた。全受験生が知っている有名大学だ。だが、あくまで合格したらいいな的なノリであって、このままの成績では出願すら出来ない状況だった。
ある雨の日、担任と進路面談があった。空がうっすら暗くなり始めた頃僕は面談を終え教室に戻った。教室の扉を開けるとそこに彼女が一人で勉強していた。冷静を装って挨拶をして帰りの準備を始めた。すると彼女の方から声をかかけてきた。
「大学どこ行くの?」とこれが初絡みだ。片思い相手から話しかけられるなんて思ってもいなかったし、コミュ障の僕には中々の試練だった。
僕は早口で僕の志望校を言った。
「え!?そうなの!?私の志望校とめっちゃ近い!」
と彼女は言った。彼女も東京の大学を目指しており、またそこの学力が高い。そんな彼女もいまのままでは合格は出来ないようだった。何より驚いたのが、僕の志望校と彼女の志望校の距離が徒歩圏内だったのだ。
「じゃあ、お互い志望校に合格したら東京でデートしよう!」
僕は顔を真っ赤にしていった。
「いいよ。楽しみにしてる!」
彼女は笑っていった。
僕に受験の神様が降りてきた。
その日から僕は死ぬ物狂いで勉強した。携帯、テレビ、一切見なかった。睡眠と食事と勉強しかした記憶がない。
分からないところがあれば先生にしつこく質問し、常に自分を高めた。
全ては東京デートの為。一緒に彼女とも勉強した。横に座って問題を解き合った。
勉強だけでなく、夢についても語り合った。
結果僕の成績はぐんぐん上がって行った。志望校にもてが届く所まできた。
今までの不安は自身へと変わっていった。
受験日まではあっという間だった。
そうしてやってきた受験前日。
僕は東京のホテルにいた。簡単に復習を終わらせた後夕食を取るために、外出の準備を始めた。その時に彼女からメッセージが届いた。
「いまからご飯食べに行かない?」
嬉しかったが、僕はこう答えた。
「受験が終わったら、行こう。大学も近くなるしね」と
ただのかっこつけかと思うかもしれない。ただ、僕は本気で思っていた。
次の日、僕は試験会場にいた。
3週間後。1通の手紙が届いた。
「不合格」
その3文字が書いてあった。心を落ち着かせようと必死だった。
でもダメだった。いままで頑張ってきた思い出が脳裏に浮かびあがると共に僕は泣いた。勉強が無駄になったのかとも思ったし、何より自分が情けなかった。
その日の夜に彼女から電話がかかってきた。
「不合格だった」彼女は泣きながら言っていた。間髪入れずに彼女はこういった。
「私は絶対にあきらめない。東京の予備校に行ってもう一年間勉強する」と
彼女は本気だった。
それからの僕は後期試験で九州の大学を受験し無事合格。
波乱万丈な受験生活に終止符を打った。
が。話はここで終わらない。
大学生活を送っている僕にはどうしても心残りがあった。確かに後期試験で大学に合格はしたもののその大学は行きたい大学ではない。僕は何の為に勉強してきたのか。
僕は携帯に手を取り彼女に電話した。
「僕も1年後。もう一回受験する。仮浪人する。一緒に頑張ろう。いい報告ができるまで連絡はしない。だから待っててね」
と彼女に誓った。
彼女は最後にこう言った。
「待ってるね。」
その後僕と彼女は連絡を取ることなく勉強をした。予備校に通いながら、大学に通いながら。1年はあっという間だった。
現役の頃よりもいい成績を取れるようになり、判定もかなり良かった。
そうしてやってきた合格発表の日。1年前泣いた日だ。
彼女から電話が来た。久しぶりに彼女と連絡を取る。誓い合った日から一年。
結果はどうだったのだろうか
「合格した」
僕は泣きながら彼女の合格を喜んだ。本当に嬉しかった。そして彼女はこう聞いた
「結果どうだった?」と。
僕は思い口を開いた。
「ごめん。本当にごめん。受験していないんだ。」
そう。僕は受験をしていない。別に日程を間違えたとかではなかった。
ただただ怖くなったのだ。高校の頃から勉強してきて、志望理由は単純でもずっと憧れていた大学。合格判定も良くなってきた。その時だった。
もしここで不合格だったら、僕は一体何なんだ。僕は本当にこの大学に行けないことをまた教えられるのか。また努力が無駄になるのか。と
二年連続で落ちることに対しての恐怖が大きくなっていった。
そうすると焦りがでてきた。不安が出てきた。何より受験が怖くなった。
結果僕は出願しなかった。
全てを話した。一切隠すことなく。彼女は黙って聞いてくれた。そして納得もしてくれた。なんて僕は情けないのだろうか。自分から一年後待っててねとか言っておいて。
すこし沈黙が続いた後彼女はこういった。
「覚えてる?高校3年生の6月。一緒に東京に行こう。そしてデートしようって言ってくれた日。それからもう二年が経ったね。早かったね。でもとても成長できた二年だったよ。一緒に受験勉強した時のことは良い思い出になった。ありがとう。ずっと待ってるよ」
こうして僕の受験は本当に終わった。
もちろん悔しかった。悲しかった。けれど。良かった。
僕が駆け抜けた高校生活に生きる気力を与えてくれた彼女に僕は感謝している。
彼女に言ってないことが一つある。「好きだ」の三文字だ。
「今日のカクテル」
「ジンライム」
カクテル言葉は「色褪せぬ恋」