別れの涙
こんにちは大学生バーテンダーです。
バーには色んな人が癒されに来られます。
仕事帰りの方。雰囲気を楽しみに来た方。
日本のお酒を飲みに来た観光客。
毎日様々な方とお話ししています。
日常生活では味わえないディープな世界が広がっています。
僕がお店に入ってからずっと来られる常連様も沢山いらっしゃいます。
今日はその中の一人のあるお客様とのお話をこうして綴ろうと思います。
この方は社会人8年目のバリバリのサラリーマン。
よく彼の友人を連れてお店に来られます。
僕はそんな彼たちと話すのが大好きでした。お仕事に入る度にお店に来てくれるのを
待っていました。
そんな彼とは、大人の話しや、会社のこと、人生の面白さなど学生には勿体ないような貴重な話をしながら時間を共有しました。
ある日のことでした。仕事帰りなのか気持ち疲れているような顔でお店に来られました。
いつものようにアードベックのソーダ割を飲みながらため息をついていました。
こういう時店員側からするとなかなか緊張します。
果たして関わっていいのか、一人で大人しく飲みたい気分なのではないのか。
などと考え、そっとしています。
しかし、彼の方からその思い口が開かれました
「実は転職します。いつまでここに来られるかわからない。」と
僕は重い空気に飲み込まれた。
仕事を始めた時から彼はこのお店に来てくれましたし、差し入れももらいました。
ときには苦しかったことも彼に相談したことがあります。
かといって僕には止める権利も無ければその話を黙って聞くしかなかった。
「今日はそれだけを伝えに来ました。」
どうやら家に帰ってしなければならないことが色々あるらしい。
「東京へ行きます。来週に。でも今日が最後ではありません。引っ越し前夜に必ずきます。」
彼はこう言って店を後にしました。
そうしてやってきた引っ越し前夜。
彼がお店に来ました。恐らく彼と会うのは最後になるだろう、しかし不思議と悲しくはなかった。
そして思い切って転職した理由を聞いてみました。
彼はこう言いました。
「僕は大学に行った。だけど行っただけだ。特段何をしたわけでもなく当たり前のように授業に出て単位を取った。そんな生活が三年続いた。そしてやってきた就職活動。僕は全然内定が貰えなかった。なぜだかわかる?」
その質問にこう答えた。
「三年間何もしなかったからですか?」
とドストレートに答えました。ごめんなさい。あいあい。
「そうなんだよ。何もしなかったんだ。やりたいこともせず、旅行にもいかず、ただただ生きていた。」
続けて彼はこう言いました。
「別に何もしなかったから人事の人に落とされたとは微塵も思っていない。それ以前の問題だった。何もしてこなかった僕がいきなりしたい仕事なんて見つかるわけがない。中途半端で大衆が言うような志望動機しかなかった。」
「結局の所、その仕事を本当にしたい人には勝てないし、きっと人事も見抜いていたと思う。だから今まで僕は本当にやりたいのかわからないような仕事をしてきた。」
説得力がとてもあった。結局何をやりたいかなんてそんな理由は後からやってくる。
でもそのやりたいことは常に先を行く。
やりたいこと?理由なんてない。やりたいからやりたいんだ。
「だからね、僕が言いたいことは簡単なんだ。沢山経験するんだ。学生なんてたらふく時間がある。やりたい事、興味を持ったこと、何でもやるんだ。そうしたら自ずとやりたいことがきっと見つかる。」
「そして高みをずっと持ち続けなさい。最初に良い会社に入ることが出来たら自信になる。そして転職がしやすい。」
僕は来年就活をしなくてはなりません。
でもやりたい事なんてない。
普通に仕事をして、普通にお金を貰う。そんな考えしかない。
好きな仕事をしてお金を貰うのと
生きるためにお金を貰うのでは人生の面白さに差が出てしまう。
僕は前者になりたい。
楽しい人生にしたい。
「また会おう。東京で。若いんだ、なんだってできる。君が生き生きと仕事をしている姿を見せてくれ。その時に一杯奢ろう。」
彼は涙ながらに僕にそう言った。
もらい泣きするタイプなので僕の目にもごみが......。
午前0時を回った頃、彼と別れを告げました。
常連さんがいなくなるの悲しいが、それ以上に勉強になった日でした。
諦めないでどんな時も 君ならできるんだどんなことも
いま世界に一つだけの 強い力をみたよ
君ならできないことだって できるんだほんとさ嘘じゃないよ
いま世界に一つだけの 強い光をみたよ
さあ皆さん。頑張りましょう。なんだってできる
せーーーーーーーーーの!!!!!!
「アイワナビーユア 君の全て」
「今日のカクテル」
「ジプシー」
カクテル言葉は「しばしの別れ」